INTERVIEWインタビュー

第3回 オーナーシェフとして壁を越える

濃厚な半年間を経て帰国。その後は、あえてフランス料理店で料理の引き出しを増やしたり、イタリアとの往来も繰り返しながら独立へのステップを踏んだ鎌田氏。かつての職場「ながぐつ亭」のシェフを務めた後、29歳の若さで目標通り独立開業を果たしました。今回は鎌田氏に『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』オーナーシェフとなってからのことを伺います。

 

食アカな人

2020年8月20日、26日 京都『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』にてインタビュー実施

人とのつながりが力に

目標通り29歳の時に独立。『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』をオープンさせたわけですね。“ほんまもん”のナポリピッツァを武器に。
本場のものをやりたかった。ただ、簡単なことではありません。例えば、修行に行ったときからわかっていたことですが、そもそも現地と日本では食材が違います。
 
鎌田
海外修行した料理人の多くがぶつかる壁ですね。
戸惑いましたよ。代用品で何とかなればいいのですが、代用品さえないものもありました。例えば、イタリアの小麦粉で生地をつくりたくても粉が手に入らない。あったとしても保存状態が良くなかったりする。チーズ、西欧野菜・・・当時は手に入らないものだらけでした。ビール酵母はフレッシュなものがなくて、ビール工場の底にたまっている部分から生きている酵母を取り出そうとしてみたり。でも、さすがにそこまで手をかけていると仕事にならない(笑)。苦労しました。
 
鎌田
解決できたのですか?
最初は自分がイタリアに行ったときに買って帰ったり、ビール酵母も冷凍して持ち帰ったり。そのうち、輸入商社さんのおかげで徐々にイタリア食材も手に入るようになってきました。でも、モノによっては扱ってもらえなくなることもあります。そんな場合は現地の人を紹介してもらい、自分が直接取引で輸入するようになりました。ビール酵母やモッツァレラチーズは、今ではフレッシュのまま空輸で直接輸入しています。
 
鎌田
個人での直接輸入は難しそうです。
かなり面倒ですし、お金もかかります(笑)。もともと輸入のノウハウを持っていたわけではありませんから失敗もありました。例えば、お店を開くときには現地から薪窯を自分で手配しました。輸入ってこうするんだぁと勉強しながら。初めてで、何も知らなくて、いざ書類が届いて窯が来るぞとなったときにビックリ。日本に持ち込むためには通関で更に100万円ほどかかるらしい。そんな費用、全く予定していませんでした(笑)。慌てて輸入業者と相談して・・・と。そういう失敗しながら勉強です。今では定期的に取引をしていて輸入にも慣れましたが、当時は知らないことだらけでした。
 
鎌田
鎌田さんは着実なようでいて、ひとつひとつの行動は大胆ですね。
わからないことについては行き当たりばったりのこともあります。そして、人に聞きまくります。すると、それまでに知り合っていた方が助言してくれたり、助けてくれたりするんです。僕は自分が知らない世界で働いている人の話を聞くのが好きなんです。料理しかしていない自分が知らないことを教えてもらえるし、そうした方たちがいざというときに助けてくれることもあります。職種問わず、いろいろな人とのつながりが力になりました。その力があるから、やってみないとわからないことに挑戦することもできたし、予想が外れても何とかなってきました。
 
鎌田
 

毎日反省している

お店は13周年を迎え、14年目に入っています。最初の頃と比べて、何か変えてきたことはあるのでしょうか?
実は何年かに一度、少しずつですがわからない程度にお店の内容を変えてきました。お客さんの意見も聞きながら。単価を変えたり、スタッフを増やしたり。ありがたいことに多くのお客さんに来ていただいているのですが、最初の3年間は妻も入れて3人体制でやっていました。地獄のようにきつかったです(笑)。この小さなお店に1日百人以上の方が来られるわけです。自分一人で料理をしていてメニューを増やすこともできないから客単価も上がらない。その分、ひたすら数をこなし、毎日帰宅するのは夜中の3時、4時という状態が続きました。空き時間に点滴を打っていましたよ(笑)。
 
鎌田
スタッフを増やし、鎌田さんの余裕をつくり、メニュー構成や客単価を少しずつ変えてきたということですね。途中、何かの壁にぶつかったことはありましたか?
毎日、小さな壁は必ず発生します。料理のスキルについてもそうだし、うまくいかないことは今でもたくさんあります。僕はそれをひとつずつ壊していくタイプで、壊した後は忘れちゃいます(笑)。ただ、実は毎日「反省」をしていました。今もそれは続いています。
 
鎌田
「反省」ですか?
スタッフには言わないのですが、実は、営業が終るたびに自分の中で「あれはあかんかった。もうちょっとこうすればよかった」と反省するんです。薪を入れるタイミングだったり、生地を用意するタイミングだったり、スタッフに声をかけるタイミングだったり・・・窯のマネジメント、生地のマネジメント、お店のマネジメント、全てについて反省します。同じ失敗を繰り返さないようにしたいわけです。とはいえ、朝になると反省したことを忘れていますが(笑)。
 
鎌田
オーナーシェフは経営者という側面もあります。経営者として不安を感じることはありますか?
ずっと不安は抱えていますよ。そもそも、したことないような借金を最初にするわけです。借りたお金は右から左に消えていきます。店舗借りたり、設備買ったり・・・。これを毎月いくらずつ返していくんだ・・・と思うと、お客さんがちょっとでも少ないと怖くて仕方なかった。でも、不安に負けるようではお店はできません。そもそも自分が好きでやったことです。いよいよとなれば、お店をたたんで何か他の仕事をして借金返せばいいか・・・というのはありました。もちろん、今でも怖いですよ。経営している以上、安心することはないと思いますね。ただ、心配し過ぎても意味はないですし、意味なく不安を大きくすることなく、常に楽しいことをしていくようにしています。好きなことをして飯を食わせてもらっているわけですし。
 
鎌田
 
『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』という魅力的なピッツェリアが生まれたのは偶然ではなく、鎌田氏が道無きところに自力で道を拓き、挑戦を続けたからこその必然でした。そして、これだけの人気店でありながらも驕ることなく、反省することを止めない鎌田氏は次に何を目指すのでしょうか。鎌田氏インタビューの最終回となる次回は、鎌田氏が未来に向けて想うこと、さらにはこれから料理の道を歩む方へのメッセージを伺います。