INTERVIEWインタビュー

第4回 今、想うこと(ご自身のこと、料理人にとって大切なこと)

開業14年目。料理の世界に入る時点で定めた目標通りにオーナーシェフとなり、業界屈指のピッツェリアをつくりあげた鎌田氏は今、何を考えているのでしょうか?ご自身の今後について、更にはこれから料理の世界で頑張ろうという次世代に対して想うことを伺いました。

 

食アカな人

2020年8月20日、26日 京都『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』にてインタビュー実施

自分には伸びシロが残っている

オーナーシェフとして、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)として結果を出してこられたわけですが、これからは何を目指したいですか?
まず、職人として目指したい境地が僕にはあります。まだ、到達できていません。そこに近づきたい。イタリアで出会った、名前もわからない職人。師匠の師匠にあたるくらいの方で、僕から見るとお爺ちゃん世代の方です。信じられないくらいに仕事が早く、動きにまったく無駄がない。急ぐ様子を感じさせず、仙人のようにあっという間に仕事を捌く。近所のピッツェリアの職人たちからも慕われていて、休み時間になると皆がそこに相談や世間話に行って・・・という凄い職人がいました。
 
鎌田
ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)として到達したい境地。奥深いピッツァの世界で追究するものは尽きないということでしょうか。
ピッツァって、数学っぽい部分と感性の部分の両面があるんです。例えば、小麦は分量通り計ったとしても実は分量通りになりません。開封してからの時間で粉の水分量も変化していますし、風味も変わっています。水は量や温度を計測してコントロールできますが、小麦については触った感じで決めていくしかない部分が残ります。塩の扱いも難しくて、見極めを間違えると酵母を殺してしまう。酵母は生きているので、そもそも強さが一定ではありません。匂いで状態を判断しながら入れ方を調整するわけです。レシピ通りにやれば毎回同じ仕上がりができるわけではなく、奥深い世界が続きます。でも、積み上げていけば80歳くらいまで職人としてレベルアップが続きます。
 
鎌田
鎌田さんの生地は鎌田さんにしかつくれないと称される理由の1つがわかる気がします。ただ、その一方で、鎌田さんは「小麦アレルギー」を持たれていると伺いました。
お店をオープンして3年くらいたった頃にアレルギー症状が出ました。粉を吸い過ぎたのでしょう。常に体に粉が張り付くような環境でしたし。数値はかなり悪いです。今は薬を飲みながら付き合っています。打ち粉を舞い上がりにくいものに変えたり、工夫して対処していますが、疲労がたまると免疫が落ちて症状がひどくなる時もありました。
 
鎌田
料理人の中には、そうしたアレルギーに悩まされる方も少なくないそうですね。
職人としてはまだ高みを目指したい。あの窯の前で倒れても構わん!という気持ちはあります。とはいえ、家族が心配しますし、ピッツァ職人としての道を断念する可能性は否定できません。実は、この店で修行してくれた職人に窯で焼くことを任せていた時期もありました。当時、よく知る人は「鎌田は引退したんやな。もう焼かんのやな」と思っていたはずです。その彼が店を卒業し、今は再び自分で焼いているのですが、やり続けたいという気持ちと、早めに次のことをという気持ちの両方があります。
 
鎌田
次のこととは?
自分は経営にまわるとか、人を育てる側にまわるとか。あるいは料理人として新境地を見つけるとか。小麦を使わない料理人になるという手もありますね。僕は欲張りなので(笑)、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)でありながら料理人でもありたかった。ナポリではピッツァイオーロ(ピッツァ職人)と料理人は別の職種です。就職するときに、どっちにしたいかを聞かれます。その意味では、僕は料理人としてまだまだ伸びシロが残っています。ピッツァ以外の料理ももっとやりたいし、あれもしたい、これもしたいが残っています。
 
鎌田
実際、ダユウキさんのメニューを見ると、ナポリピッツァを謳いながら、ピッツァ以外の料理もすごく充実しています。そして、どれも美味しいです。
ピッツァしか食べられない店にはしたくなかった(笑)。料理もまだまだ進化させたいです。そのためにも、人を育てて、自分の時間をつくって、自分が外に出られる環境をつくれば、外から新しいことを持って帰ってくることができます。同じ仕事を繰り返すだけだと劣化します。たとえ同じ料理でも少しずつ進化させていきたい。やることは尽きません。ダユウキという箱を使って、自分のフィーリングで面白そうと思うことをしたいですね。コロナで時間ができたとき、経営者としての視野も拡がり、物事のバランスを考え直すことができました。走り続けた時間が止まったときに初めて見えたこともあります。なんにせよ、好きなことをして食っていけているわけですから幸せなことです。
 
鎌田
 

頭を動かし続けることが大事

鎌田さんのお話はとても興味深く、聞きたいことも尽きません。最後に、これから料理の道で頑張っていく人たちに対して想うことを教えていただけますか?
常に考えて仕事をすることですね。仕事を作業としてこなすのではなく、頭を動かし続けることが大事です。上の人からの指示についてもそうだし、お客さんと接する時でもそうです。最初は誰でも「仕事ができない」ところからスタートします。ただ、考えている子は失敗を繰り返さず、2回目は必ず何かを変えてきます。そして、考えたうえでよく「視る」「聞く」ということも大事です。その場に存在する情報をちゃんと把握・処理したうえで仕事をする。何となく目の前の皿洗いをするのではなく、今何が起きているのかを視て、聞いて、考えておけば、自分に余裕も生まれますし、次のステップに行くスピードが変わります。
 
鎌田
まさに、鎌田さんが実践してこられたことですね。
プロを目指すのであれば、教えてもらうのを待つのではなくて自分から技術を手に入れにいくことが大事です。社会は学校ではありません。言われたことをきちんとやるのも大事ですが、それだけでは足りません。生き残ることもできません。5年くらいは誤魔化せるかもしれませんが、10年、20年、同じ仕事でプロとしてやっていくのであれば、言われなくても自分で考えることが大事。僕はそう思います。
 
鎌田
残念ながら、料理人もお店も生き残る率が低すぎる(続けられずに辞めていく人が多い)という声をよく耳にします。
諦める人は辞めていく世界ですから。すぐに成果を求め、成果がでないから挫折する。続いている人は諦めない人であり、いきなり成果が出ないということをわかっている人。続けていくことで将来得られるものがあると信じられる人だけが生き残る世界かもしれません。少なくとも自分で独立してやっている人については、そのように感じます。
 
鎌田
環境に合わせるのではなく、環境そのものを変えながら道を切り拓いてきた鎌田さんは、厳しい状況下においても諦めず、考えながら動いて何とかしてこられたわけです。その経験の中で掴み取ってこられた極意がそこに含まれると感じました。これからの展開を想像するとワクワクします。2日間に渡った長時間の取材にご協力いただき、本当にありがとうございました。
 
飲食の世界で成功し、結果を出し続けるためには、美味しいものをつくることができることとは別の力も必須であることを強く示唆するインタビューとなりました。最終回となる第4回で鎌田氏が指摘されたことは、成果を出し続ける人に共通するモノの見方・考え方・動き方そのものです。卓越した結果を出す人にとっての1日は常人の何倍も濃いものなのだろうと実感する取材となりました。