INTERVIEWインタビュー

第4回 大切にしていることと今後の展望

オープンするまでの構想に8年。そしてオープン後9周年を迎えて10年目に入った京都『SEction D'or(セクションドール)』。狙って獲得したミシュランガイド掲載に続き、ゴ・エ・ミヨ2020にも掲載された今、永松氏は今後の人生(キャリア)をどのように考えているのでしょうか?

 

食アカな人

2020年3月28日、29日 京都『SEction D'or(セクションドール)』にてインタビュー実施

もともと“残らないもの”が好き

今更かもしれませんが、永松さんが料理に引かれたのはなぜだったのでしょうか?
僕はモノをつくるのが好きだったんです。でも、それが残るのは嫌やった。絵とか図工とかは子どもの頃からすごく好きでしたが、残っていくのは嫌ですぐに捨てていました(笑)。その点、料理は残らないじゃないですか。どんなにきれいに盛り付けても、すぐに壊され、食べられて無くなってしまう。それが良かったんです。
 
永松
ずっと続いていくとか、残るというのが嫌?
そうです。終わりがあるから頑張ることもできる。セクションドールを始める前の仕事もすべてそうですよ。ホテルやレストランで仕事をしたときも期間を区切っていましたし、フランスから帰ってきて田淵さんと料理のデザインの仕事をしたときもそう。めっちゃ楽しかったけど、それは終わりを決めていたからかもしれません。
 
永松
ということは、セクションドールも終わりが来る?
そこは正直迷います。これまでの自分の生き方だと、10年の区切りで一度終わりを設定し、次のテーマに向かうのが自然です。ただ、実際にはセクションドールを通して出会ったお客さんがいて、ありがたいことにうちの店を人生の流れの中でとても大事な場として組み込んでくださっている方もいます。そして、「ゴ・エ・ミヨ良かったなぁ」とか、「来年も桜見に来るよ」と言ってくださる。料理人としてというよりも、セクションドールのオーナーとしてその重さは感じます。だから、単純に「終わりにします」とは言えないのが正直なところです。独立して店を持ち、10年近くやってきたから生まれた感情かもしれません。
 
永松
 

自分の経験を引っ張ってもらい、新しい活動へ

とはいえ、新しい活動も開始しましたね。今回、食アカ構想に参画し、団体理事としてその経験を生かした動きが始まっています。
もともと10周年という節目は意識していました。年齢的に立ち仕事がきつくなるような衰えも否定できません。どんな料理人でも加齢による衰えはありますから。その衰えにかたくなに抵抗し、年老いても「俺、いくつに見える?若いやろ」という料理スタイルは自分にはなじまないだろうと(笑)。じゃあ、どうする?と考えていました。
 
永松
人生のステージをどう描くかというテーマですね。食アカのテーマの柱でもあります。
少し前に、かなり頑張ってゼロから海外展開を実現することに挑戦していたことがあるんです。結局うまくいかなかったのですが、そのときに、まったくのゼロから挑戦するのではなく、自分が積み重ねてきたものや持っているもの、具体的には「経験そのもの」を何かの動きに引っ張ってもらうことで新しい動きを考えたほうがいいんじゃないかと気がついたんですよね。
 
永松
そこに食アカの話がやってきた。
そういうことです。経験を生かすというと、なんだか飲食店経営者が素人に経験の切り売りをするようなコンサルティング業をイメージされるかもしれません。そういう方もいらっしゃると思いますが、正直中途半端で二流、三流止まりになってしまうと僕は考えたんです。でも、食アカで目指すものは、もっと本質的で社会全体に働き掛けていくものだし、いろいろな英知を集めて新しいものを生み出すこと。幸いなことに新しいテーマと出会うことができました。
 
永松
セクションドールの経営をしながらの食アカ活動スタート。やることが多いです。
確かに、やることめっちゃ多い(笑)。でも、楽しんでできるし、これも自分が「引っ張る力」を発揮したわけで、忙しくても結果出しますよ。
 
永松
私たち食アカ一同、永松さんとの出会いには感謝していますし、これからワクワクしますね。永松さん自身の人生(キャリア)形成の歩みが今後の食アカの知見の源泉そのものにもなってきます。まさにセクションドールの営業だけでもお忙しい中、2日間にわたるインタビューに時間を捻出していただきありがとうございました。
 
2日間にわたる取材でした。永松氏は食アカの仲間でもあるわけですが、今回はじめて人生(キャリア)の中で積み重ねてきたものを伺いました。その中で、一人の人間としての永松氏の柱も浮かび上がり、多くの学びをいただくことができました。記事として紹介できた話のほかにも、文字にはできないリアルな話満載の2日間となりました。