瀬戸内海国立公園に位置する小豆島。温暖少雨の瀬戸内海型気候を特徴とする小豆島は「オリーブの島」と呼ばれている。100年余り前に日本で初めてオリーブ栽培に成功した場所が小豆島だ。現在、国内オリーブ収穫量のうち94.8%のシェアを香川県が占めているが、その歴史はこの小豆島から始まった。(シェアは平成29年産を対象とした農林水産省「特産果樹生産動態等調査」による)
そんな「オリーブの島」で静かに、自然に寄り添いながら独自のオリーブ栽培を行うオリーブ専業農家がある。山田オリーブ園。日本初のオリーブ有機栽培に成功し、オリーブ栽培として初めて有機JAS認定を受けた。自社加工したオリーブオイルはあっという間に売り切れる、知る人ぞ知る農園である。
この山田オリーブ園は“生き物が豊かな場所”。草生栽培を行っており、オリーブの果樹の根本部分こそメンテナンスのために草が取り除かれているが、畑の殆どの地面は青々とした草で覆われている。刈った草もその場で土地に還し、土が大切に育てられている。
そのオリーブ園の中を一人で見回り、時折ドライバーを取り出して果樹の一部を削りとって何かを探している男性がいた。この男性こそが山田典章(やまだ のりあき)氏、山田オリーブ園:園主であり、日本で初めて有機オリーブ栽培を確立させた人物だ。
山田氏が探していたのは「オリーブアナアキゾウムシ」。日本におけるオリーブ栽培を阻む最大の害虫らしい。山田氏はこの害虫の生態を明らかにし、農薬に頼らないオリーブ栽培法を確立した。ただし、ゾウムシはオリーブ栽培にとっては害虫だが、山田氏にとっては「オリーブ好きでオリーブに食わせてもらっている同志」だという。見つけたゾウムシは殺さず、自宅に連れ帰って枕もとの近くで飼っているらしい。
食アカな人 vol.2では、そんな山田オリーブ園:園主『山田典章』氏に話を伺った。
1967年 佐賀県に生まれる。幼少の頃から農作業が好きな祖父の影響もあり、農業は身近なものだったそうだ。
1990年 岡山大学農学部卒業。本当はそのまま大学院へ進み、農業分野での仕事を志していたが、諸事情により大学院進学を断念し、全く違う道を経由することになった。
大学院進学を断念した時点で、既に世の中の新卒就職活動シーズンは終わっていた。結局、学生バイトとして縁があったベネッセコーポレーション(当時:福武書店)に就職し、農業とは程遠い教育事業分野で社会人生活をスタートさせた。
会社では「思いのほか仕事が面白かった(本人談)」らしく、保育事業の立ち上げ等、約20年間を教育系の事業分野に力を注ぎ込んだ。
しかし、会社員生活20年が近づくにつれ、農業への想いが再燃。
2010年 縁のあった小豆島に移住し、新規就農者としてスタートを切った。島でたどり着いたのは、日本でまだ誰も成功していなかった有機オリーブ栽培。その栽培法の確立に成功し、有機JAS認定を取得し、農業の世界に自分の住む場所を生み出した。
2020年 初めての著書「これならできるオリーブ栽培」(一般社団法人農村漁村文化協会 刊)が発刊される。10年間は小豆島の農園に籠り、有機オリーブ栽培を生業とするための地盤固めを続けてきたが、これからは外に出て次なる成長ステージを目指そうとしている。