INTERVIEWインタビュー

藤田 怜美

SATOMI FUJITA

京都『kashiya』オーナーシェフ

 

藤田 怜美

京都『kashiya』オーナーシェフ

食アカな人Vol.5でお話を伺ったのは『kashiya』オーナーシェフ:藤田怜美氏。和と洋の枠を超えた「菓子」を独自の発想で創り出す菓子職人・パティシエだ。

藤田氏が『kashiya』で提供するアシェットデセール(皿盛りのデザート)はまさに一期一会の一皿。季節とともに皿の主役は変化し、果物は1シーズンの中でも状態が変化していく。その状況を見極め、藤田氏は自分自身の手でその日のお皿を仕上げていく。自由自在に駆使する技に和洋の壁はない。

主役食材の存在感が多面的に美しく彩られたお皿の上ではさまざまなパーツが組み合わされ、整形されている。その姿は驚きとともに感動を呼び、食べる人の五感を心地よく刺激する。その至福の時間を求め、『kashiya』には多くのファンが全国から訪れている。遠隔地から定期的に訪れるリピーターも多い。

一方で、居心地の良い空間では、ご近所の方が気楽にお茶をしている姿も珍しくない。藤田氏はそういうお店をつくりたかったそうだ。人に幸せな気分になってもらい、自分のつくるもので喜んでもらいたいという仕事への姿勢が感じられる。店内では、パートナーとして『kashiya』開店時よりサービスを担う中崎雄仁氏が阿吽の呼吸でゲストをもてなし、空間の柔らかさを醸し出している。

今回の食アカな人では、洋菓子、和菓子それぞれの世界で本場・本物を目指して突き進み、この自分ならではの形を実現するに至った『kashiya』オーナーシェフ:藤田怜美氏の歩みと未来への想いから学びたい。
 

藤田 怜美

京都『kashiya』オーナーシェフ

1983年 秋田県生まれ。小学生の頃、ケーキ屋のショーケースを前に目を輝かせる人たちの姿に感動し、菓子づくりを将来の仕事とすることを考え始める。

高校卒業後、辻製菓専門学校(大阪)さらには同フランス校へと進学し、洋菓子づくりの土台となる理論・技法を学ぶ。フランス校在学中はM.O.F.(Meilleur Ouvrier de France:フランス国家最優秀職人章)のシェフが率いるショコラティエA la jaysinia等の現場で実践的な技術を吸収。

2003年に帰国。南青山レ・クレアシヨン・ナリサワ(現:NARISAWA)に入社し、菓子職人としてのキャリアを本格的にスタート。

2005年 更なる研鑽と活躍の場を求めて再び渡仏。バスクの2ツ星レストランLes Pyrenees 勤務を経て翌年にはパリへ。2ツ星レストランLe Relais LoisXIIIではシェフパティシエになるなど、複数のレストランやブーランジェリーで頭角を現す。

2010年 パリで開かれた和菓子の研修会に参加。フランスでミシュラン掲載のレストランを食べ歩き、どんなデセールを食べても驚きを感じなくなったことに物足りなさを感じていた藤田氏だったが、和菓子職人の見事な手さばき、洋菓子とは全く異なるアプローチで美しい菓子がつくりだされる様子に大きな衝撃を受けた。

持ち前の好奇心と探求心を刺激された藤田氏はすぐに帰国を決断。パリでの成功に執着することなく、京都の老舗和菓子屋:亀屋良長に入社して和菓子職人の修行を開始した。

今も亀屋良長の人気ブランドとして多くのファンを獲得している"Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA"は、その名前が示す通り、同社に入社した藤田氏の洋菓子の経験と老舗和菓子の伝統との融合によって誕生した。(今も藤田氏が顧問としてブランドをバックアップしている)

2014年 亀屋良長を退社。自分自身のお店『kashiya』を京都市内にオープンさせて新たなフェーズへ。2018年には外務省「日本ブランド発信事業」でストラスブールやミラノで和菓子についての講演、実演を行うなど、新しい挑戦への意欲も健在。洋と和、どちらも本場・本物にこだわって研鑽を積んできた藤田氏ならではの歩みは次なるステージへ。
 

食アカな人

第1回 菓子づくりに魅了され、フランスを目指した 

第2回 パティシエの階段を一気に駆け上がる

第3回 和菓子の世界を経て新しいステージへ

第4回 未来に向けて想うこと

【食アカの視点】藤田怜美さんへの取材を終えて